2013年5月7日火曜日

死んでしまったヒョウ

 久しぶりの更新です。

3月の初め、夜8時過ぎに急に携帯電話がなりました。
「家の近所でヒョウの死体が2体みつかったんだけど!」
「え?」耳を疑いました。

ヒョウを研究していて難しいのが、彼らが頭がよく人目につかない行動をとるため、
観察したり、捕獲したりするのが大変困難だということ。
だけど、そのおかげで、2009年からここナイロビで調査をしていてヒョウが罠にかかったり、
人に殺されたりしたのは2件。ライオンが10頭近く殺されている事を考えたら、
その数も少なく、さらに範囲も国立公園周辺でなく、もっと広域で2頭でした。

それが、1度に2頭も。。。何が起こったのか。

夜、遅かったために現場に駆け付けることができず、
翌朝早く、死体の引き取りと現場を見にでかけました。








死体は連絡があったとおり2頭でしたが、1頭は腐乱が激しい状態でした。
死体を回収した現場を見に行きました。すごく谷が深いところで、
マサイの人が、牛を放牧に行くときにくらいしか通らないような、
険しいところでした。実際、マサイの人に発見されたそうです。

ヒョウが2頭一緒に死ぬというのは、どう考えても自然じゃありません。
死体を検証してみると、どうやら推定年齢1年の若い兄妹のようでした。
1頭はオスだとわかったのですが、もう1頭はほぼ頭蓋骨と皮しか残っていなかったので、
性別が不明でした。

ヒョウが死んでいた場所のあたりでは、他のヒョウの足跡も見つけることができ、
地形的にも環境的にもヒョウの生息地としてとても適している場所だったので、
そこで、ヒョウが死んでいたことに大変ショックを受けました。



自然に死んだのではないということは、誰かが意図的に殺したといいうことなのですが、
まず考えられるのが毒殺です。
ヒョウは先ほどもいったように、人目を避ける性質なので、
人の前になかなかでてきません。
毒を盛った肉などを放置しておいた可能性が高いです。

ヒョウは若い個体だったので、わたしの考えたストーリーは、
1.生後1年ほどたち、母親と離れている時間が徐々に長くなった。
2.自分たちだけで獲物を探さなければならない。
3.まだ狩りが下手なので、兄弟そろって行動する。
4.狩りをしやすい家畜を襲おうと考える。
5.人家の近くで肉を見つける。

調査でヒョウを捕獲してみてわかったのですが、
大人のヒョウはものすごく注意深くて、
なかなか落ちている肉などは拾わないものだということがわかりました。

若いがゆえに、毒の入った肉にかかってしまったんですね。。。
悲しいことです。

わたしが調査している国立公園にはだいたい10頭から15頭ほどのヒョウがいると
考えていて、そのうち2頭が死んでしまったというのはダメージが大きいです。
おまけに、若いオスは繁殖にとってとても貴重ですから、
この事件は個体数に影響を及ぼす出来事として深刻に受け止めなければいけません。