2012年10月16日火曜日

国立公園の外の森


ヒョウにGPSをつけて追跡を実施していくなかで、ヒョウが国立公園の中と外を行き来していることがわかったのですが、ヒョウの中には、ほとんどの時間を公園の外で過ごしている個体がいます。そこで、公園の外の森がどのようになっているのか、視察に行ってきました。住宅街の森は何度かあるいたり、居住者にインタビューを実施したりしていたのですが、公園のすぐ外の森には行ったことがありませんでした。ここの森は保全地区に指定されているのですが、スラムに近かったり競馬場が近かったり、墓地があったりと、人があまり密でない地域なので、強盗やカージャックなどの犯罪が頻繁に起こる場所であるため、慎重にならなければならないこともあって、視察ができずにいました。写真の左側に見えるのは電子柵です。ヒョウやライオンは電子柵があっても全く関係なく、すり抜ける場所を見つけて、移動することができます。



 強盗がいるかもしれないので、今回、レンジャーのおじさんはライフルを持参です。

 保全地区に指定されているので、本来、許可された人以外は入ることができません。ただ乾季の草がない時期、許可をもらえばマサイの人々は牛を保全地区内で放牧することができるそうです。これは国立公園では禁止されていることなので、おどろきました。また、車ではいる道がなく、今回は獣の道のような細い道をMy Carでがんがん進みました。

 

 途中で橋が壊れてしまって渡れないので、そこからは歩くことに。
歩いていると、野良犬が急にあらわれたり、隠れて木を切っている女性がいました。犬はヒョウの大好物で、この森には他にもブッシュバック、バブーン、レッドダイカー、スニなど、ヒョウの餌になるような動物が生息しているということで、ヒョウがこの森を好んでいる理由がとてもよくわかりました。また森も深く、車が通れないのでとても静かです。川もあるためヒョウの移動にはもってこいの地形でした。保全地区内で木を切ることは禁止されていますが、近所に住む住民がファイヤーウッド(薪)を集めに来ていました。レンジャーをみると一目散に逃げて行きました。ファイヤーウッドの他にも、お土産品の木彫りを作る用の木を、この保護区から盗んで行く者たちも多く、チェーンソウで切られた木の切り株をいくつも見ることができました。

 
 また、このあとも歩いていると、3人の男たちが茂みの中へ逃げて行きました。カージャックをたくらむ人間や、強盗などが潜んでいます。ここは絶好の隠れ家になっています。

 今回の視察で、この保全地区がヒョウにとって森や谷などの地形が、ヒョウの生息域として適切だということがわかりました。また、餌になる動物たちも豊富に生息していることがわかりました。その反面、強盗や野生動物を罠にかけて売りさばくような人々がうろうろしている場所だということもよくわかりました。2009年にこの森のすぐ外側でヒョウが罠にかかって左前脚を失い殺されてしまうという事件がありました。

  
 このようなことが今後、おこることがないといいのですが。やはり公園の外にでてしまうと、いろいろな危険がともないます。しかしヒョウの行動をコントロールすることはできないし、コントロールしてしまっては野生でなくなってしまいます。

 この保全地区を視察した日の夕方、この保全地区を保全している様々なステークホルダーの人たちが集まる会議に出席させてもらうことができました。その場を借りて、ヒョウの行動域を提示し、この保全地区がどれだけナイロビのヒョウにとって重要な位置を占めているかをお話させていただくことができました。森と共に、そこに住む野生動物たちも護っていきたいです。
 


2012年10月8日月曜日

赤ちゃんが生まれる季節!

 キリンの赤ちゃん誕生の季節です!!今まで大きなお腹をしていたお母さんキリンたちも、もう少しで、身軽になります。

 キリンの妊娠期間は約14カ月。野生にいながらにして、大きなお腹を抱えて生活するのって、本当に大変だろうなと思います。草食動物は妊娠期間が長くなっています。ゾウにいたってはは22カ月間もお腹の中にいるそうです。

 
 キリンの親子。赤ちゃんは背の高さが160センチ~170センチくらいです。すくすく大きくなって欲しいです。

 インパラの赤ちゃんも見かけました。


 ライオンやヒョウがいないか、お母さんは警戒して周りをみています。

 
 シロサイの赤ちゃんもみかけました!この子は生後3~4カ月といったところでしょうか。みんなすくすくと育ってくれるといいです。

 野生動物たちの多くは、食物がたくさんある雨期の始まるころの出産時期をあわせているのですが、最近は地球温暖化の影響を受けて、雨期の時期がずれてきています。野生動物たちはこの気候の変化にうまく順応しているのでしょうか。森林やサバンナが都市の拡大によって失われ、野生動物たちの生息域は目に見えて減少しています。この先、人と野生動物の共存は実現するのでしょうか??あるいは地球上から野生動物はいなくなってしまうのかもしれないです。本当に難しく悲しい問題です。



2012年10月2日火曜日

サイ その2

 サイその2を書くつもりはなかったのですが。きのうシロサイの1頭が国立公園から外に出てしまいました。いつも4頭でいたシロサイのうちの1頭です。


 この4頭の中に、以前に他のオスを殺してしまい、ツノを切られてしまったオスがいるのですが、そのオスが、別のオスを群れから追い払ったようです。そのため行き場のなくなったオスが他の場所に逃げたところ、それが国立公園の外だったようです。

 そして運悪く、このサイが逃げて行った先が、採石場でした。深く掘ってあるところですり鉢状になっています。なかなか出れないようなので、レンジャーたちがどうにか公園に戻そうと思案しますが、車も入れない場所だし、ヘリコプターで釣って公園に戻すにはサイの体重が重すぎるということで、昨日は一度あきらめて放置することにしたようです。

 しかし、サイの需要は高く、公園の外にいるといつ殺されしまってもおかしくないので、早急に公園の中に戻さなければいけません。

 今日になって、ヘリコプターで空から追い立て、どうにか公園内に戻したと聞きました。

 また、外に出て行ってしまう可能性もあるだろうし。野生動物を管理すること自体矛盾していることだけれど、これだけ都市に隣接している国立公園だと管理しないわけにはいかないのが、難しいところです。